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電気管理技術者の開業について [自営業]

はじめに

電気管理技術者事務所を開業、独立する為に、電気主任技術者資格取得から、実務経験をどう積むか、そして、電気管理技術者になる為の関係官庁への手続き、独立開業となる電気管理事務所の開設、さらには、開業後の事柄を私の30年の経験から紹介します。


電気主任技術者資格取得方法

電気主任技術者資格の取得方法は、ご存知の方も多いと思いますが、二通りあります。それは、当然、電気主任技術者第一、二、三種の試験を受けて合格する事と、実務経験によって経済産業局の承認を受け、資格を取得する事です。なお、実務経験による取得は非常に通り難いです。今はどうか判りませんが、私が第三種をとった昭和59年頃は、規定されている実務経験年数の三倍程度の年数が必要だと言われていました。つまり、規定が8年であっても、実際は20年以上ないと取得出来ないという事です。なお、受験の場合は、受験資格は一切ありません。また、私は、三種を取った後、勤めていた処に、11万Vの特別高圧変電所があったので、必要に迫られて、昭和63年に、二種を取得しました。

ちなみに、私が電験3種の試験勉強に使ったテキストは、電気書院発行の「新方式 電験3種B問題テキスト」集でした。当時の試験は、二日間6教科でしたので、試験が終わった時にさすがに、疲れたのを覚えています。ただ、それまで、1日4時間くらいの勉強を5ヶ月間ぶっ続けたので、もう、試験が始まる前に合格を確信しました。合格の秘訣は、どの試験もそうでしょうが、これだと思えるテキスト集を一つに絞って、徹底的にやり抜く事だと思います。少なくとも、過去10年間に出た問題は、必ず解ける様になっておくというのは、最低条件だと思います。

平成25年版 電験第3種過去(10年)問題集(リンク)

必携電気主任技術者:竹野正二著(リンク)


余談) 独立というのは、どなん形でも、境遇と決断ですね。人間は目的があって、かつ、やらなければならない事は、やる生き物だと思います。目的を達成できないという事は、その人に合っていないか、やり方が悪いか、その人にとって、本当には必要ない事のような気がします。弁護士でも、あれだけ大変な勉強をして独立しても、本当の勝負は開業してから、お客さんを獲得していけるかの勝負になります。これは、本の勉強とは異質です。電気主任技術者資格を取得して、電気管理技術者での独立開業も同じです。資格を取得することは、スタートの、そのまたスタートに立ったに過ぎません。しかし、最後は、他人から使われるサラリーマン生活を、心の底から抜け出したいという強烈な思いがあるかどうかでしょう。


電気主任技術者と電気管理技術者との違い

電気管理技術者になる為には、当然、電気主任技術者の資格がいる訳ですが、電気保安業務をするという点だけから言いいますと、電気管理技術者にならなくても、電気保安業務は出来ます。ただし、その場合はそれなりの高圧受電設備のある会社や工場に勤めて、サラリーマンとして仕事をする事になるので、独立とは言えません。全国にある一般財団法人 電気保安協会も同じです。ちなみに、電気事業法で電気保安業務が出来るのは、二つです。電気保安法人と電気管理技術者です。
電気保安法人とは、会社や保安協会等、法人格があるものですが、電気管理技術者は個人事業主です。ちなみに、一般社団法人(協会)や事業協同組合に、個人事業主の電気管理技術者が所属している方も多いですが、これらは、事業者団体と言って、電気事業法とは、法的に何の関係もありません。協会、組合等に所属する事で、仕事上、助け合ったり、情報交換をする為、あるいは、独立するする為には、最初は何もわからないので、そういうところに所属する訳です。また、旅行とかで、自分が不在の時に、自分が受託している事業場で何か、電気的トラブルがあった時に、代わりに行ってもらうという事ができます。ただし、そういう体制が、出来る協力関係が出来れば、事業者団体に無理に属する必要はありません。
個人的には、数年属して、独立するという道を考えるというのが理想だと言うのが私の経験です。ちなみに、私は、公益法人制度改正もあって、10年程度で、完全独立をしました。


資格取得後の実務経験について

努力のかいあって、めでたく第三種電気主任技術資格に合格したとして、電気管理技術者になる為には、実務経験が必要です。この実務経験年数は、規制緩和の流れの中で、随分短くなりました。緩和前は、第三種で、最低9年でしたが、今は5年になっています。第一種に至っては3年ですね。
この間は、どこかの会社で、電気主任技術者として実務経験を積むことになる訳ですが、当然ながら、それなりの高圧受電設備があるところでなければなりません。その設備は、多ければ多い所ほど良いでしょう。この場合は、勿論、その事業所の専任の主任技術者として,又は、大きな事業場が数か所あるとかいうところは、統括の電気主任技術者の元で、所轄事業場担当の電気主任技術者として届けて、経験を積むことになります。


電気管理技術者になる為の手続き

必要な実務経験年数が過ぎたら、経済産業局、今は、各管轄の、例えば九州なら、九州産業保安監督部電力安全課に申請をする訳ですが、その場合に実務経歴書を提出しなければなりません。これにも、書き方がありまりすので、各管轄の技術者協会(クリック)や各管轄の保安協会(クリック)に相談して見て下さい。なお、私が申請した頃は、面接もありました。その時の通産局の担当者の質問を今でも覚えていますが、「ケーブルの水トリー」の質問と、「配電線の再閉路は何分後か」と言うものでした。水トリーは関連書を読んでいたので知っていましたが、再閉路の時間は、90秒後が正解ですが、正確に答えられなかったですね。実際に、独立して、電気保安業務をやっている人には、もう常識的質問ですね。実践的な知識を問うたということです。


独立開業について

これについては、管轄の産業保安監督部の承認がおりれば、独立出来る訳ですが、最初の受託一件目の申請が下りた時が、独立への本当のスタートとなります。後は、少し税金の勉強をしておいた方がよいでしょう。難しい事を学ぶ必要はありません。これからは、自分で税金の申告をしなければなりません。ちなみに、私は、最初から、控除の多い「青色申告」をしてきました。65万円控除です。損益計算書だけでなく、貸借対照表も出す必要があるので、概要ぐらいは、知っておいた方が良いですね。何も簿記の資格を取る必要はありません。それと、若い人は、小規模企業共済に入っておいた方が良いですね。個人事業主の退職金制度です。知らない方は、小規模企業共済で検索して見て下さい。


営業活動について

これについては、役所相手と、民間会社相手がありますが、役所の場合は、自分の周辺自治体に、業者登録願いを出します。これは、自分の住んでいないとろの役所は受付してくれない所があると思いますが、全国で、いろいろだと思います。私の周辺では、県も含めて、二年毎に出します。指定された期間に出さないと入札に参加出来ません。昔はここら辺も緩かったのですが、最近は、厳しいですね。各自治体のホームページを見れば、入札情報や、業者登録用紙がダウンロード出来ます。登録時期も決まっているので、頭に入れておく必要があります。ちなみに、自治体の事業所は、役場庁舎、小中高等学校、運動公園野球場、公民館、文化会館、上下水道などですね。
次に、民間会社ですが、民間会社は難しいです。新設の場合は、見積り提出の可能性がありますが、既設事業場の場合は、既に誰かが見ていすまのでほぼ不可能です。事業者団体に属して、年配の方で、この仕事を辞める人から譲ってもらうとか、新設の場合は、建設新聞等を見ていて、300平方メートル以上の施設が出る情報探して現場に行って見るとか、ですね。ちなみに、300平方メートルというのは、高圧受電設備になる可能性がある建物の目安です。ただ、建物が建ち始めていたら、もう間に合いません。誰かが、既にアクションを起こして契約済みの可能性大です。また、先輩方を大事にして、情報収集を怠らない努力も必要です。
それと非常に大切な事を一言、それは、電気管理技術者業務で、何とか普通に生活出来るようになるまで、まあ、三年はかかると思って下さい。その間の食い扶持をどうするか、金銭的な事を含めて、非常に大切です。私の場合は、それまで居た会社に嘱託として属しながら、管理技術者業務にシフトしていきました。


管理技術者の年収について

個人的な感想では、年収1000万円が通常のこの仕事の上限だと思います。理由は、法的に電気管理技術者は、事業所の規模に応じて、点数が決められていて、現在33点以内です。件数から言ったら、50件から、 60件(事業場)でしょうか。管理技術者の中には、専任の大きな事業場とコネクションを持っていて、そこの定期点検を受け持ったりして、1500万円を超えてる人もいます。15年以上やっている人で、1000万円を超えている人は、個人的には珍しくないと思います。ちなみに、私は、現在、59歳で、もう、あまり無理をしたくないので、適当ですね。自分の自由になる時間が欲しいです。どうなるか判りませんが、後5年頑張れば、年金が貰えるはずですので、それまで、極端に収入を減らさない努力をするだけです。サラリーマンの人は、こういう考え方をしませんが、我々、個人事業主は、出費が減ることが、収入が増えるという考え方をしますし、例えば、年金を年200万円もらえれば、一事業所、年20万円の所を10件減らせるなあと考えます。
つまり、その分、身体が楽になり、実質収入は、変わらない訳です。かつ、この長寿社会、この仕事は停年がありません。役所の人で、60歳で停年になって、一年くらいで、物凄く老け込む人を何人も見てきましたが、その点、我々は良いなぁと思います。年金を沢山もらっても、お金は生かさないと、何もしなくなってはダメですし、それに、墓場には持っていけませんものね。少し、脱線しました。


今後の電気管理技術者の需要について

平成7年に、電気主任技術者試験制度は、大きく改正されました。6教科二日間から、4教科1日です。内容も記述式から、選択式と記述式へと。そして、科目合格制度の導入。
一つの科目が合格になった場合、その年を含めて、三年間は、その科目の合格が有効になり、簡単に言えば、三年間で、4教科すべてに合格すれば、資格取得です。ちなみに、ここでは、一種、二種の変更については、触れません。さて、この改正によって、受験者が、約10倍に増えたと記憶しています。合格率は変わっていませんので、社会に出る資格取得者数も10倍になりました。この事により、仕事先の取り合いが増えたかどうかですが、地域に寄るでしょうが、増えたとも言えるし、大して変わっていないとも言えます。私自身の感触としては、大して変わっていない印象です。なぜか、資格取得者が、必ずしも、この仕事についていないというのが大きな理由と、私は受け止めています。
なぜ、せっかく資格取得したのに、それをいかしてないのか、それは、この仕事を実際にやっていく事が、現実には簡単ではないからです。逆に言えば、本気でやる人には、チャンスだとも言えます。


その他

ここでは、参考記事を一つ載せておきます。
今後は、電気設備の事故事例を載せていく予定です。
(1)構内1号柱のアレスター用PCSのリードが腐食して銅線部が一部外まで出ていた為に PGSが動作、PCS撤去アレスター直結。なお2、3年前もPGSが一度動作した事あるが 、その時は絶縁測定確認のみで受電した。しかしその頃からリードの腐食が進んでいたはずであると 考えると、その後の雨風等で、今回までなぜPGSが動作しなかったか非常に不思議である。

(2)塩害地区(海岸近く)の事業所の絶縁値が海風の時と山風の時とでは極端に違う。 また絶縁測定値の温度湿度との相関がほとんどない

(3)九電VCTと高圧ケーブルとの間でカラスの仕業か、一相がもう少しで芯線が 見えそうな程損傷しているのに、ここ数年来のDI-11による絶縁測定値が数万メグオーム で、年次点検で電柱に登って見なかったら気づかなかった( ← 写真左 )

(4)PAS(LA内蔵)及びVCTがほぼ新品、高圧ケーブル(約15m)は古い事業所で PASが数度、原因不明の動作をした.九電に依頼しVCTの一次二次を切り離し点検、 及び念の為ケーブル取り替え以降、動作はない.またその配電線系統に、その頃に 零相電圧検知の微地絡は出ていない模様(九電問い合わせ)また切り離したケーブルを点検したが異常があるとは思えなかった.(当事業所は1年半後に 移転を控えているので古いケーブルは撤去せず、新しいケーブルは仮設工事の 形態をとった)とりあえず4つ程上げましたが、これだけでも多くのテーマが浮かんできます。

それは、碍子等の塩分付着量の問題、リークのメカニズムについて、PASの原因不明の動作時の その配電線の零相電圧の変化の検出、塩害気象条件等により絶縁抵抗値が極端に低い場合の 交流加圧試験(3.8KV)による漏れ電流との関連。 これらについて、あるいはメーカー等が出しているデータもあるとは思いますが、 私は今後、我々自身が自分の現場で、出来るものは実験等を通して検証していく必要性を感じています。

実践的書籍の紹介

図説 6kV 高圧受電設備の保護協調Q&A―電気現象から見た地絡・短絡の解説(リンク)








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